宇宙こぼれ話

長尾 第7回 ロケット発射場の話(7)

「ロケット発射場の話(7)」

4. 射場施設・装置の特徴

4-1発射台・射点(続き)
 前回発射台の各種の方式、種子島宇宙センターでの例などを紹介させていただきましたが、今回は内之浦宇宙空間観測所です。

  内之浦宇宙空間観測所の発射場は昭和36年工事開始、昭和37年から使用されていて、種子島宇宙センターより起伏の大きい台地(標高約1,000メートル近い大隅半島の肝付山地から続く台地が津代半島となって志布志湾に入っていく手前)に建設されました。2ヵ所の発射場から400機を超える固体燃料ロケットを打ち上げてきました。
 現在「KS台地」といっている発射場は、開設当時から使用されていて、日本で最初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられました。その後も小型観測ロケット打上げに使用されていて、平成29年1月には47年ぶりに超小型の人工衛星打上げの挑戦がありました。

内之浦宇宙空間観測所全景

(上記写真 内之浦宇宙空間観測所全景)

ミュー台地(現イプシロン射点)

(上記写真 ミュー台地(現イプシロン射点)

 一方「ミュー台地」の発射場にあるミューロケットからイプシロンロケットの発射施設は中型ロケットの規模であり、昭和41年から打上げを行っていて、整備塔は昭和57年に一度更新されましたが、以下の特徴があります。

・ミューロケットは発射時に斜めに打ち上げる方式であり射角(上下角)と方向(方位角)を打上げ毎に変更調整することが要求された。
・初代の整備塔は整備塔全体 (合計で約500トン) が4つの旋回台車により円形レール上を自転のように動いて方位角を定め、ランチャーがまず7メートル前方に走行して整備塔の外に出た上で傾斜し上下角を設定する方式でした。

初代整備塔/ランチャ

(上記イラスト 初代整備塔/ランチャ)【三石智・平田安弘,1975年】

・現在の整備塔(700トン)は固定で、ランチャー(140トンのM-Vロケットを含むと400トン以上)が旋回(ロケットの旋回半径は12メートル以上。これにより塔外に出る)し、さらに傾斜する方式となった。
・イプシロンロケットでは垂直に打上げる方式となり、旋回後の位置を特定位置に定めることができ、後述(別途)する「煙道」(排気ガス装置)を設置することができた。

(左)M-V使用時の整備塔 / (右)イプシロンロケット用に改修された整備塔(現在)

(上記イラスト)
(左)M-V使用時の整備塔 / (右)イプシロンロケット用に改修された整備塔(現在)

4-2発射管制室
 ロケットの発射までの遠隔操作を行う要員が詰める「発射管制室」は、信号系統の規模などから射点(あるいはロケットの整備点検を行う場所)の近くに設置する方がメリットがあるが、安全上の観点からは射点から遠い方がよい。種子島のH2A,Bでは射点から約500mの地下12mのところに設置され、分厚いコンクリート造りの中に管制室があります。中型ロケットの時は170mのところに半地下構造(土盛り2m)で設置されていました。

(上記写真 中型ロケット発射場の配置)

(上記写真 中型ロケット発射場の配置)

 内之浦宇宙空間観測所でもミューロケットでは、射点に近い地下構造の発射管制室(射点との位置関係は前出の写真を参照方)で操作していたが、イプシロンロケットでは2km以上離れ安全距離を確保した地上の管制センター管制室からの操作とした。(ロケットそのものと管制システムの徹底的な簡素化・知能化により操作卓も簡素になって遠隔化も容易となった) 次期新型H3ロケットもこの方式が目標となっている。

(上記写真)ミューロケット発射管制室

(上記写真)ミューロケット発射管制室

イプシロンロケット発射管制室

イプシロンロケット発射管制室

〔出展元〕
■写真・イラスト出展元:
・JAXA,<http://www.jaxa.jp/>,2017年12月28日アクセス
・長尾隆治(2016年)「ロケット発射場の施設,インフラ」『土木技術』第71巻,2016年2月号,p.12~16,理工図書(株)
・三石智・平田安弘(1975年)『ミュー・ロケット用整備塔,ランチャについて』(東京大学宇宙航空研究所報告,第11巻第1号)

長尾隆治
執筆者
取締役 技師長長尾隆治